繁華街の闇

ぼくが普段過ごしている街には怖いものがたくさんある。別に幽霊の話じゃなくて怖い人の話だ。有名な繁華街で外国人も多くDQNも多く怪しげな店もかなり多い。でも普段は極めて平穏な街であって夜中まで飲み歩いても怖い思いをすることはない。


日本には治安の悪い街など存在しない。なぜならそれは警察が強いからであって外国みたいに殺人事件があっても解決出来ない拙い操作能力とか警察すらギャングにビビって犯罪を見て見ぬ振りするどころか袖の下すら渡っていたりするような国とは違う。


それらの国のギャングが手当たり次第動いているものを捕食しようとする獰猛な肉食獣だとしたら日本の裏社会は食虫植物のように不運にも闇に吸い込まれていった人間を捕食するような存在だから運が悪くない一般人が被害に遭うことはめったにない。


でもこんな街を散歩してるとたまに深い闇に遭遇することがある。今日はそんなお話。


ある日のこと。人通り少ない細い路地に止まったワンボックスのドアが開くとなかに目つきの悪い若い男が4、5人。奥から若いギャル風の女の子が降りてきた。彼女はここから一本道を隔てた繁華街の大きな通りにあるオシャレなカフェの前に立って誰かを待ってるようだ。


ワンボックスはドアを閉め徐行しながら少し位置をずらした。女の子が立つカフェの場所が見やすい場所で停車した。どうやらスモークがかかった窓から女の子を監視しているようだ。


あれはなんなのか。ツレは売春の監視だという。でもぼくはそうではないと思う。


おそらくあれは美人局だったのではないだろうか。出合い系サイトでひっかけた憐れな被害者といかにも女子が喜びそうなカフェの前で待ち合わせして落ち合い、そのままホテルへと向かう。ホテルでとりあえず楽しんだあと行為の余韻に浸りながらお互いの指を絡ませホテルを出るとそこにはガラの悪い男たちが4、5人。そのなかで一番悪そうなやつが一言


「お前、俺の女になにしてんだ?」


これで憐れな被捕食者の人生は終わりだ。このままワンボックスに乗せられ身分証のコピーを取られたあと高い示談金を支払う書類にサインさせられることになる。


まあこれは推測の域を超えない話だがその一件を目撃したあとググったらやはり似たような美人局事件がその繁華街に頻繁しているらしかった。


また別の話。

その街は東京でも有数の規模がある駅ではあるが駅前のある一角には人がそんなに多くない。そしてその場所になぜかポツンと一個だけ公衆電話が存在する。


平成も終わり令和の時代だというのに東日本大震災で災害時にもあまり役に立たないこたが露呈してしまった公衆電話がしかもひとつだけポツンと存在するのである。


その公衆電話のすぐ近くには、これまた平成の遺物とも言える昔気質のテレクラがある。


その公衆電話から30代くらいの女性がどこかへ電話をしているのを何度もみたことがある。その街では有名な売春窓口だったのだ。


客はテレクラに入り電話を待つ。女は公衆電話からそのテレクラに電話をして客と値段交渉を行う。合意に達したらテレクラを出た客と一緒に繁華街に消える。


そんな話はだいぶ前から有名な話だったが、どうやら最近少し変わってきたみたいだ。


その場所から100mくらい離れたビルの警備員と話をしたときのこと


「また今日もやられたよ」


と彼は言った。なんのことか聴いてみたらどうやらそのビルにあるだれでもトイレがホテル代わりになっているようだ。


客と売春婦がそのビルのだれでもトイレに入り込み小1時間楽しむらしい。その間は他の客が使えなくなるから迷惑してるのだとか。


ついに堪忍袋の尾が切れたその警備員は行為の最中であろうそのトイレのドアをドンドン叩き少し汚い言葉で退出を促した。


さすがに警備員がいる間は部屋にこもったままだったようだけど彼がいなくなったあとそそくさと出てきて着衣の乱れを直しながらそのビルを後にしたようだ。


そのビルだけでなく近隣のビルでもやっているみたいで個人営業売春婦の方々はどうやらホテル代もケチるくらい貧しくなってきたみたいだ。


もうひとつ


その日は泥酔した状態で繁華街を歩いていた。一緒に酒を飲んでいた人が女の子がいる店に行きたいとか言い出して、2人でふらふらキャバクラとかガールズバーとかを探していた。そしたらどこからともなく


「なにかお探しですか?」


とキャッチが声をかけてきた。これは絶対ダメなやつだと無視して立ち去ろうとして横を向くと熱心にキャッチの話に耳を傾ける飲み仲間の姿があった。


ぼくは無理矢理でも引き離そうとしたが上機嫌の飲み仲間は40分1人5000円飲み放題の条件でキャッチとの交渉を成立させてしまった。ぼくはその時点で逃げたかった。遠くのほうで「キャッチには絶対についていかないでください」とのアナウンスが虚しく響いていた。


案内されたのは雑居ビルの4階。いかにもな怪しさがあった。厚い鉄の扉を開けEDMがかかった薄暗い店内の奥にあるフカフカのソファーの席に通された。


我々の席には1人ずつ計2人の女の子がついてくれた。女の子は20代半ばくらいのギャル風でいかにもなキャバ嬢だった。


内心ビビリつつもウーロンハイをちびちび飲んでギャル風キャバ嬢とたわいもない世間話をしていたらそのギャル風キャバ嬢が


「一杯頂いても宜しいですか」と


ぼくはそのくらい良いかなと思ったら隣から


「ダメ」と


飲み仲間が言う。


メニュー表を確認すると女の子の飲み代は一杯2000円だとか。これを2人に飲ませて、さらに交代で来た子にも飲ませてみたいに計算するとかなり割高だった。なるほどトラップはここにあったのか。飲み仲間は酔ってはいても判断は的確だった。


我々は次々くる女の子の酒の催促をすべて断る無粋な客で通し、きっちり40分前にはボーイを呼んで会計してもらった。


ボーイが店の奥から伝票を持ってくるまでの間はかなりドキドキだったが本当に1人5000円で終わった。


その店はおそらくいわゆるぼったくり店ではなかったようだ。でもあのまま女の子に一杯飲ませ続けていたらそれなりの額にはなったと思う。それに延長でもしてしまったらかなり痛い額が消えていたことだろう。


実際都会の繁華街に来たときにはキャッチにはついていかないほうが良い。よほど勝手が分かってる街でもないかぎりは。


日本の繁華街は普通に遊ぶ分には全く危険なことはひとつもない。偶発的な犯罪に巻き込まれないかぎりは安心して遊べるところだ。


しかしへんに欲をかいて良い思いをしようとか思うと食虫植物の罠にハマることになる。そんなお話。

コメント

  1. クマが出る地域の方が怖い。あいつら示談とかできない。

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    1. やつら鈴の音でビビるインキャやん

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