平成化石4 終電後編

子供のころテレビで観る大人は終電逃したあとサウナに泊まっていた。まだ世の中のことが分からないぼくは暑い部屋で寝るなんて大変だなとか思っていた。


だけど成人したぼくが終電無くしたときにお世話になったのはネットカフェだった。サウナより格安でドリンクバーがついていて食べ物も安い。


このビジネスの形態も最初は漫画喫茶から始まった。漫画喫茶と言ってもいまのイメージとは違って24時間営業するわけでもなく個人スペースがついてあるわけでもない本当に漫画が置いてある喫茶店だった。


ぼくが最初に終電逃したときは24時間営業も始まっていて深夜に入店すると同じように終電逃した人たちで溢れていた。


でも当時はまだ漫画が読める喫茶店にネットが出来るPCがある程度のものでインテリアは喫茶店だが雰囲気は図書館みたいにシーンとしていた。終電逃した人用に狭い仮眠スペースみたいな暗い部屋があってリクライニングチェアの背を倒して仮眠を取っていた。


しばらくして机に仕切りが出来て個人スペースっぽくなっていって最終的に完全に間仕切りで区切られたPCとリクライニングチェアだけの擬似個室みたいな形になった。漫画は大量に置いてある本棚から個室に持ってきて読む。始発までいままで読めてなかった人気作品をよく読んでいた。


10年くらい前からこのスタイルが一気に広まったおかげでネットカフェのPC使って犯罪予告するやつが出たりネットカフェに住む生活困難者が出たり社会問題も産まれた。


いまではシャワーがあるのは当然として住民票に登録出来たり届け物の送り先になれたりもはやドヤに近いものになっている。


ネットカフェより少し上のサービスとしてビデオボックスもある。元はと言えばビデオを借りて個室で鑑賞出来るサービスだったのだが、ネットカフェより少し高いくらいの値段で朝までいられるから終電逃したときに便利だ。


ビデオボックスではふかふかのフラットシートが敷いてあったりしてブランケットが借りられたりで足伸ばして寝ることが可能だ。やっぱりシャワーもついているし、住んでる人はいなさそうだから雰囲気も良い。


逆に繁華街で24時間営業してる居酒屋や喫茶店の始発前は地獄絵図のようだ。深夜なのに混んでるし、大抵の客が寝ているし、もう他でたらふく飲み食いしてきたのでろくに注文もしない。そしてやたら声が大きくなる。お財布にネカフェにも泊まれる余力を残しておかないと4時間くらい地獄に堕とされることになる。ビール1杯をチビチビ飲みながら刑期が明けるのを待つのは拷問だ。


令和が終わるころの終電逃した人達はどこに泊まっているのだろうか。それとも電車も自動運転が主流になって24時間営業で終電という概念すらないのかもしれない。仮にあったとしても無人運転タクシーが安く乗れて始発までの時間を待つなんてことも必要なくなるのかもしれない。



コメント

  1. 漫画喫茶が普及前はカプセルホテルにでも泊まってたのかな。
    自家用車文化圏だと、車で家に帰るか駐車場や路肩に車止めて寝る、なんだろうな。
    戦前は、終電が今より少し遅かったそうだよ。

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    1. カプセルホテル、サウナだね。そこらへんは体験してないからわからかいけどね。戦後戦地から帰ってきた軍人さんも国鉄が大量に受け入れて労組が強くなったからかな。終電が早くなったの。

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